【地域課題解決のためのGR】「新型コロナウイルスを官民連携で乗り越える」ために何が必要か《第1回GR勉強会》鎌倉市長・松尾崇、CFJ・関治之、カマコン・宮田正秀》
GR勉強会
「課題先進国日本」。人口減少社会が到来し、少子化・高齢化・多死化の波が押し寄せ、あらゆる制度が軋んで音を立てています。その中で、税収は下がり、公務員は減り、ニーズが多様化する中で、政治や行政だけでは、解決することのできない課題が山積している。
この社会的課題をどのように解決するべきか。
行政(首長)と民間の市民コミュニティ、個人を通じて先例なき時代の新しい社会課題解決を担う「自分ごと」としての議論を行なっていきます。
◼新型コロナを官民連携で乗り越える
吉田雄人(以下「吉田」と表記)———GR勉強会の第1回目は、鎌倉市長でもあり、全国青年市長会の松尾崇さんとCode for Japan(コード・フォー・ジャパン、以下「CFJ」と表記)代表理事・関治之さん、また KAMAKON(以下「カマコン」と表記)ファシリテーター・宮田正秀さんをお迎えし「新型コロナウイルスを官民連携で乗り越える」というテーマで進めたいと思います。
まず自己紹介をお願いします。
松尾(以下「松尾」と表記)———鎌倉市長の松尾と申します。持続可能な世界に誇るまちづくりを旗印に掲げて行財政改革を1丁目1番地として取り組み現在、3期目になります。コロナに関してはさまざまな価値観が変わっていくこと、人々の生活、文明までも変わっていくといわれるるなか、その渦中で私にとってもいろいろな思いがあります。その思いを少しでもお話しできればと思います。
吉田———ちなみに「全国青年市長会」には年齢制限などあるのですか?
松尾———49歳までの選挙で当選したときまでいられる会です。もう青年ではないかもしれませんね。
吉田———今回コロナ対策の取りまとめを会長としてされたということですが、なぜ青年市長会でコロナ対策を行おうと思ったんですか?
松尾———じつは日本GR協会の「コロナ対策 自治体最前線!!」(https://covid19.graj.org/)のホームページが立ち上がりまして「この取り組みはいい」と考えたんです。ただ、そのホームページの中身が少なかったので「もっと事例があるのではないか」と思ったんです。そこで青年市長会のメンバーもそれぞれ対策を悩みながら取り組んでいると考え、その取り組みを共有することで、今後行う対策のヒントになればプラスになると思い行いました。
吉田———そうなんですね。日本GR協会を立ち上げ、コロナ禍の厳しい環境でしたので「まずはここから役に立ちたい」と考え、自治体の政策をまとめるところからはじめました。調査を通じて、お金を使わずに知恵と工夫さえあればできることがたくさんあるとわかりました。さらに、松尾市長から「青年市長会でコロナ対策をまとめたから」と言っていただき、多くの事例を掲載することができました。
そこで、こうした事例を社会にいち早く発信するうえで、相談しましたのがCFJの関治之さんでした。関さん、自己紹介お願いします。
◼自分たちのスキルを活用し「ともにつくる」
関———CFJとはコミュニティだと我々は言っています。一般社団法人の法人格ですが、コミュニティのコンセプトは、「ともに考え、ともにつくる。」で、このコンセプトに基づき活動しております。
このコンセプトに込めた意味は今回のコロナのような「社会的課題」が起きた時に行政に頼りきりで要望、要求するだけでなくて、自分たちでできることは自分たちでやるべきだと考えました。もちろん、勝手にやるのではなくて行政の方々といっしょに課題から考え、私たち自身の要望を、民間(市民)と行政の「立場」をいったん外して「それぞれ何ができるか」を持ち寄り、社会課題の解決に向けて未来を考え、「ともに」つくるをコンセプトとして活動しております。普段は私自身、会社を経営し、ビジネスをやっており、一市民として生活しております。他のメンバーも同じです。
特徴的なのは私たちはコミュニティなのでCFJがいろいろなことをやっているわけではないのです。このコンセプトに賛同したいろいろな方々が参加し活動しているんです。
例えば、札幌や金沢で「コード・フォー・札幌、金沢」ですとか名乗る方たちがいて、その地域でやりたいことを取り組んでいます(全国で約80地域が活動)。私たちがコントロールしているわけではなくて、それぞれの地域で独立し草の根的に活動しています。なので、地域によっては数人でやっているところもあれば何十人で例えばイベントを開催しているところもあります。ポイントはその地域の人たちが何か自分たちのスキルを活用して課題解決をしたいと思い、自主的に活動していることです。
最近は、「コロナ対策 自治体最前線!!」サイトのお手伝いしたようにNPOだったりとか、団体のホームページだとかいろんな社会課題をITによって解決する地域に関係ないような活動も出てきました。コロナ関係の取り組みをいろいろやっていますが、一番有名なのは東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)ですね。オープンソースでサイトをつくって全国に広げたりとか、そういったものをお手伝いしたりとかしています。これもオープンソースを使っていろんな人たちの協力によってつくられているような、GRの一つの事例かと思っています。
吉田———圧倒的なスピード感がすごかったですけれども、マネジメントはどうやっていたんですか?
関———東京都のサイトに関していえば、私が直接行っていました。これまで一緒に活動してきたメンバーでこの人は「こういうことができる」とスキルセットで揃えて2日間でこのサイトをつくって最低限でいいからとにかく公開し、それからいろんな人たちの貢献をとりいれていくための仕組み、ワークフローを東京都の職員と考えながら早いスピード感でやろうということになったんです。
吉田———各都道府県にも類似のサイトが立ち上がり、例えば県によっては「公認」にしたり、あるいは「リンク」を貼ったりとか、そういうのもあったと思いますが、その辺のマネジメントはどうだったんですか?
関———そこは各地域の方々の交渉におまかせしていました。とはいえ、進めるうえで「行政とどう話していけばいいのかか、わからない」とか、「データを出してほしいのに出してくれない」とか、そういう問題が生じたので、そこは総務省や「ブイレッド」といっしょにひな形を作り、標準の推奨形式を総務省でガイドラインを出してもらい、「こういうオープンデータはこの形式でできる」とコミュニケーションをしやすくすることで支援をさせていただきました。
吉田———マネジメントがなくてサイトの品質が一程度担保されているというのがすごかったです。こうした活動は新しい動きだと感じましたが、実際はCFJ自体は東日本大震災(2011年)がきっかけになったんですよね。
関———そうです。私自身は公共についてまったく関係ありませんでしたが、まさに東日本大震災で「何かできるんじゃないか」と始まったプロジェクトです。
「コロナ対策 自治体最前線‼️」
https://covid19.graj.org/
【日本販GRとはどんなときに役立つのか】
【(一社)日本GR協会とは】
行政だけでは解決できない構造的な課題が増えている。お金もない、人もいない、新しい課題に対応できるノウハウもない。一方で民間にはサービス・ソリューション・プロダクトがあり、課題解決に資する。それをうまくマッチさせることで良質な戦略的な官民連携を行うことで地域課題解決が前に進む。これがGRであり、GR協会はそれを広めていく組織です。
具体的にはGRを広めて、GRの成功・失敗事例が学べ、課題解決に当たるプレーヤー同士が属する組織を超えて「つながれる」ことがGR協会設立の目的と理由です。(2020年1月設立)
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